お役立ち情報
福岡の中小企業の未来戦略ー経営革新計画の魅力とは
2024年01月05日(金)
福岡の中小企業や小規模事業者が未来への展望を拓く手段の一つとして、「経営革新計画」があります。
この「経営革新計画」という言葉、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
本シリーズでは、経営の新しい扉を開く鍵ともいえる、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新」の魅力に迫ります。
第一弾となる今回は、「経営革新って、そもそもどんなもの?」という疑問に応えるべく、中小企業診断士が「経営革新」の概要についてお伝えいたします。
経営革新とは?
経営革新とは、簡単にいえば、ビジネスの新しい扉を開く鍵のようなものです。
「中小企業等経営強化法」では、「経営革新」を「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義しています。(中小企業等経営強化法 第2条第9項)
一言でいえば、「経営革新」は「新しい事業で経営を向上させること」。
そして、「中小企業等経営強化法」で定める経営革新には、とても魅力的な特長があります。
①業種の制約なし!
すべての業種の経営革新が支援対象です。
②自社だけでなく任意グループ等、柔軟な連携体制でも実施可能!
自社一社だけでも、他の企業と連携・協力して、経営革新のプランを実現することも可能です。
③具体的な数値目標も作成できる!
経営革新計画には、数値計画もしっかりと盛り込まれています。
計画を作る際に、具体的にどのような数字を目指していくのかを検討することができます。
④都道府県等によるフォローアップも!
都道府県などもサポートして、承認されると1年から2年間の進捗状況を見守り、必要に応じてアドバイスももらえる制度です。
経営革新は、厳しいビジネスの戦いで成功するための鍵です。
経営目標を設定して、新しい事業にチャレンジし、経営をグッと引き上げる――これが「経営革新」の真髄です。
そして、それを書式化したものが「経営革新計画」。
新しい事業で経営を向上させる計画をつくり、それを都道府県等が承認してくれる「経営革新計画」。
「経営革新計画」を作るにあたっては、都道府県等に承認してもらうために必要となる2つのポイント ー「新事業活動」と「経営の相当程度の向上」をしっかり理解することが大切です。
「新事業活動」とは?
それでは、「新事業活動」とは、どのようなことなのか見ていきましょう。
「新事業活動」とは、「新たな取り組み」のことで、経営革新計画を作成する際にキモとなるものです。
具体的に「何が「新事業活動」にあたるのか?」疑問ですよね。
中小企業等経営強化法では、以下の5つが「新事業活動」として定義されています。
中小企業庁「2022年版 経営革新計画進め方ガイドブック」に掲載されている具体的な事例と一緒に見ていきましょう。
① 新商品の開発又は生産
≪具体例≫
◆建設業者が、下水汚泥などの産業廃棄物を植物を使って処理し、新しい肥料を作って販売する
◆業務用の強力な空気清浄機を作っていた企業が、きれいな空気に対するニーズの高まりを受け、家庭用に小型かつ強力な空気清浄機を開発する
② 新役務の開発又は提供
≪具体例≫
◆美容室が、高齢者や身体的に不自由な方などのために、美容師が設備搭載の車で出張し、カットやブローからヘアメイクや着付けなどのサービスを提供する
◆畜産農家向け飼料販売業者が、畜産農家の繁忙期や旅行時に社員を派遣し、家畜の世話をすると同時に、経営効率向上のコンサルティングサービスを提供する
③ 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
≪具体例≫
◆果物の小売業者が、フルーツパーラーを開店。フルーツ&ベジタブルマイスターの資格を持つ店員が、高品質なフルーツを使ったスイーツやジュース、健康志向のランチも提供
◆金属加工業者が、金属熱加工製品の開発に伴い、実験データを蓄積してコンピュータを使い、熱加工による変化を予測するシステムを構築。実験回数を削減し、新商品開発を迅速化することでコストを削減する
④ 役務の新たな提供の方式の導入
≪具体例≫
◆不動産管理会社が、企業の空き社員寮を高級賃貸高齢者住宅にリフォームし、介護サービスや給食を加えて提供する
◆タクシー会社が、乗務員に介護ヘルパーや介護福祉士の資格を取得させ、高齢者向け移送サービスで介護サービス事業へ進出して多角化を図る
⑤ 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
≪具体例≫
◆困難とされている新素材の大量加工に関する研究を行い、得られた加工技術・ノウハウを自社製造ラインで活かす
◆介護用ロボットの利便性向上のための研究開発と実証実験を行い、成果を元に介護ロボットを開発し、自社事業に活かす
それぞれの中小企業者にとって、「新たな事業活動」であれば、他の会社で既に使われている技術ややり方でも、基本的には問題ありません。
ただし、
①同じ業種の中小企業がその技術をどれくらい使っているか
②同じ地域の他の同じような会社がその技術をどれくらい使っているか
を検討し、すでに普及している場合は、承認対象外となります。
また、単に新しい製造ラインを追加したり、古い設備を更新したり、新しい営業所を増やしたり、取り扱う商品を増やすだけでは、既存の事業を強くするだけで、新たな取り組みには該当しませんので、注意が必要です。
新しい商品や役務の開発、販売方式の変革、最新技術の研究など、これらに挑戦することが「新事業活動」。
これらを通じて、どれだけ経営が変わっていくのか、自社の将来性にワクワクせずにはいられませんよね。
「経営の相当程度の向上」とは?
「経営の相当程度の向上」とは、次の「付加価値額または一人当たりの付加価値額」と「給与支給総額」の2つの指標が、事業期間の3年~5年で、相当程度向上することを意味します。
事業期間終了時点での次の2つの指標の「伸び率」がポイントとなります。
それぞれの事業期間終了時の経営指標の目標伸び率は、以下のとおりです。
① 「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」の伸び率
(企業全体の付加価値や1人あたりの付加価値がどれくらい増えたか)
「付加価値額」は、企業が商品やサービスを生み出す際にどれだけ価値を生み出しているかを示す重要な数字です。
具体的には、営業利益(売上から経費を引いた利益)、人件費(従業員の給与や福利厚生費)、減価償却費(設備や機器の年々の減価分)を合算したものです。
「付加価値額」= 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
「一人当たりの付加価値額」は、企業全体の付加価値を従業員の数で割って一人あたりの価値創造力を示します。
これが高いほど、一人ひとりが企業にとってどれだけ多くの価値を生み出しているかが分かります。
「一人あたりの付加価値額」 = 付加価値額 ÷ 従業員の数
経営の向上を見るのに、売上高だと、経営の一面しか見ることができません。
一方、「付加価値額」を見ることで、企業活動の全体像を把握し、企業が生み出した価値を総合的に判断することができます。
経営革新計画では、これらの伸び率が「年率3%以上となる」ことが必要となります。
3年計画の場合 9%、4年計画の場合 12%、5年計画の場合 15%以上の伸びが必要となります。
※事業期間は、3年、4年、5年のいずれかとなります。
※目標伸び率は、事業期間終了時に達成すべきもので、事業期間中の伸び率は問われません。
② 「給与支給総額」の伸び率
(支払った給与の総額がどれくらい増えたか)
給与支給総額は、給与に各種手当を足したものです。
この中には、従業員や役員に支払う給料、賃金、賞与、雑給、各種手当(残業手当、休日出勤手当、家族(扶養)手当、住宅手当など)など、給与所得とされるものが含まれます。
ただし、交通費(通勤手当)や退職手当など、給与所得とみなされないものや福利厚生費は含まれません。
「給与支給総額」 = 役員報酬 + 給料 + 賃金 + 賞与 + 各種手当
経営革新計画では、これらの伸び率が「年率1.5%以上となる」ことが必要となります。
3年計画の場合 4.5%、4年計画の場合 6%、5年計画の場合 7.5%以上の伸びが必要となります。
※事業期間は、3年、4年、5年のいずれかとなります。
※目標伸び率は、事業期間終了時に達成すべきもので、事業期間中の伸び率は問われません。
経営革新計画は、中小企業が将来に向けて大きな一歩を踏み出すための貴重な機会です。
経営革新計画をとおして、目標や重点課題がクリアになり、進捗状況を確認しながらスマートな事業展開ができるんです。
新しい事業活動や取り組みを通じて経営の相当程度の向上を達成し、持続可能な成長を実現しましょう。
本記事では、経営革新計画の概要について解説いたしました。
次回は、経営革新計画の承認を受けるメリットや申請方法について解説いたします。
株式会社レグレーヌでは、経営革新計画の策定支援も行っております。
株式会社レグレーヌの事業内容につきましては、コチラをご確認ください。
お問い合わせ及びご相談につきましては、
下記フォームよりご入力の上、ご送信ください。